今回インタビューしたのは、シンガポール発モビリティテック系スタートアップとして、全国の自治体や交通・物流事業者などとプロジェクトを行っている SWAT Mobility Japan株式会社 の代表・末廣 将志氏。スキイキを利用して初めて外部人材活用に取り組まれた事例として、その背景や意識した工夫、効果実感などについてお伺いしました。複数ポジションで外部人材を同時活用しながら、少数精鋭規模の組織がリソースを最適化しやすい体制づくりにつなげている参考としてご覧いただければと思います。少数精鋭のスタートアップにありがちな “リソース不足” の解消に悩んでいた― 末廣さんが取り組まれている事業・プロジェクトについて教えてください。SWAT Mobility Japanは、シンガポール発のスタートアップです。いかに少ない車両でいかに多くの人や物を効率的に輸送するかというルーティング・アルゴリズムを利用したアプリ提供をビジネスとしています。― どのようなステークホルダーと事業を行われているのでしょうか?オンデマンド交通と呼ばれるような新しいモビリティを自治体さんや交通事業者さんに提供したり、物流事業者さんに配送ルート最適化サービスなどを提供したりしています。日本では現在(2023年6月時点)、約50地域での実績があります。ニッチな分野でわかりづらいかもしれませんが、もしご興味ある方にはHPの事例紹介など見てみてもらえればと思います。https://www.swatmobility.com/jp/case-studies― 現在、複数の外部人材と協働されていると思いますが、どのような組織状況・背景なのでしょうか?私たち日本法人は現在4名の組織です。まず代表である私がいて、他2名がアプリケーション導入を推進するプロジェクト・マネジメント担当、あと1名が事業開発担当という体制になっています。このような規模となると、いわゆるジェネラリストとして自分自身のリソースをかなり幅広く割く必要がある状態が続いていました。プロジェクトの進行にもしっかり入りますし、組織自体に関する事務やバックオフィス業務、また採用についてだったりと様々ですね。負担が大きく、かつ量に “波” が起きやすい業務を見極め、複数の外部人材を募集!― スキイキで外部人材活用をするに至った経緯を教えてください。昨年(2022年12月)、福岡県北九州市の『KITAKYUSHU SDGs STARTUP ECO SYSTEM PROJECT』という環境・ロボット・DX分野スタートアップ支援事業との関わりからスキイキを知りました。元々、市営バスを運行している北九州市の交通局との取り組みで、乗降データを自動分析し路線バスのダイヤ改正プロジェクトを行っていたため、そこからつながってきっかけとなった形です。「所有から活用へ。」今の時代に求められる企業の人材獲得方法とは?|イベントレポート (note)― 外部人材活用で現状のリソース課題を解決するイメージはあったのでしょうか?そうですね。同時進行するプロジェクトが増えてきたりする中で、コアメンバーとなるエンジニアの採用に取り組まなければいけないと思っていたのですが、採用の専任担当がいないというのが悩みでした。事業の特性柄、私自身も現地に出張に行っていることも多くため、採用自体の大きな方針はさておき、それを具体的な計画や実行に移していく担当者としては自分は適任ではないとは思っていました。かといって今後恒常的にずっと採用活動を続けるためというより事業・プロジェクトの状況によるところもあるため、採用担当者は社員としてではない形が合っていると考え、外部人材として募集・活用に至りました。― 採用担当以外ではどのような人材と協働しているのでしょうか?採用ともうひとつ喫緊の悩みだったのが、いわゆる営業事務のような担当者がいないことでした。外資企業ならではかもしれませんが、本国との連携において、英語の資料やデータを翻訳しないといけなかったり、その逆に日本語のものを資料を英語に翻訳しないといけないのがなかなか大変な、でも重要な業務のひとつなんです。今は様々翻訳ツールなどもありはしますが、やはりまだまだ完璧には翻訳されないので、結局は人の手で修正や執筆しないといけません。そのため、普段は私か他のプロジェクトマネジメント担当がやるしかない状態を変えたいと思い募集・活用しました。今年(2023年1月)から1名、その後3ヶ月もしないうちにもう1名追加で計2名の方と今も取り組んでいます。効率的な活用とするための秘訣は、依頼側から期待する役割や動き方をコミュニケーションしていく!― 現在、稼働してもらっている中でどのような効果を実感されていますか?採用担当に関しては、基本的に必要な工数のほとんどをお任せさせてもらっているので非常に満足しています。募集原稿の準備はもちろん、日々のスカウト送付選定や面談のスケジュール調整など、細々たくさんの工数がかかる業務をおおむね自走してもらえています。その方のおかげで、採用業務における連携の仕組みづくりにもつながってきました。エクセルベースで管理フォーマットを作ってもらい、採用業務の進捗や面談評価などをまとめられるようになったため、今後の採用業務が属人化し過ぎることを避けたり、採用計画の目標に対する現状可視化ができるようになりました。営業事務の方も、2名の方それぞれと未だ継続しているくらいなので、頼りにしています。数ヶ月続けていく中で両名の役割分担もはっきりしてきました。今は、1名は秘書のようなイメージで、大小問わず社内のタスクをとにかく効率的にこなしてくださっています。キャリアが長く経験も幅広い方ならではのフットワークといった感じです。もう1名の方は、コンサルティングファームでの経歴がある方なので、資料やデータ周りのことにより注力してもらっていて、どうしても少なからず専門知識がないと難しいような分析グラフの作成なども行なってくれて助けられています。もちろん、ベースとなる情報や素材はこちらから連携するのですが、かといって単に資料作成が得意なら誰でもすぐできることというわけでもなく、その方の経験・スキルのおかげで効率的に行なえています。― その実感には、外部人材活用ならではという観点もありますか?あると思います。一番は、リソース最適化の観点ですね。組織の状況や計画、またプロジェクトのフェーズに合わせて活用・稼働が可能になるというのが大きいです。今の当社のような規模の採用活動では、毎日決まって丸ー日かけるほどの業務があるとは限りませんし、無尽蔵に常に人材を募集しているとも限らないので、正社員として固定的なリソースが必要とは言えません。営業事務においても、例えば資料作成・分析はわかりやすいと思いますが、プロジェクトのフェーズによって業務量や必要性が変動しやすい面があります。初期段階ではそのプロジェクトの詳細やデータに関して資料化する機会が多いと思いますし、導入を進める段階になれば分析のリソースはあまり必要ではなくなることもあります。業界・業種を問わず、よくよく見直してみると、このような必要リソースの “波” というのは多かれ少なかれあるのではないかと思います。単発業務とまではいかないけど、かといってフルタイムでないといけないわけでもない。そういう業務やポジションには、外部人材という存在、また外部人材活用という方法が非常に適していることを実感しました。― 募集・活用していく中で、うまく活かすための工夫などされましたか?ひとつは、外部人材の方との面談や契約時に、しっかりと “期待度のすり合わせ” をしたことが良かったかもしれません。定性的・定量的それぞれ、こちらがイメージしていることを伝えるというのを意識しています。例えば採用業務の依頼でも、どのくらいスカウトを送りながら、どのくらいの面談を経て、どのような人の採用を何名くらい目指していくのかといった整理ももちろんですし、その上で、実際にコミットしてもらいたい範疇や動き方についても共通認識がずれないようには心掛けました。戦術・実行面のリソースを補ってもらいたいのに、戦略的なことに時間・コストが割かれすぎてしまうともったいないですよね。そうした事前のコミュニケーションもあってこそ、外部人材活用の効率面でのメリットがより出てくると思います。― そうした工夫は、なぜ意識されるようになったのでしょうか。社員ではない人材の活用となると、やはりどうしても不安もゼロではなかったからでしょうか。稼働してもらう時間、同じ場所でずっと働いてもらうわけではなくリモートベースで、スキルや稼働内容・量に期待してお願いするとなると、契約条件に見合ったパフォーマンスかどうかというのが見えづらいのではないかという懸念は少しありました。そうした元々のイメージもあってか、先ほどのような工夫を意識したのかもしれません。新入社員のように教育しないといけないといったことがなく、経験・スキルを活かし、すぐに・効率的に稼働してもらえるのが外部人材活用のメリットだと思いますが、かといって経歴からくる期待だけで丸投げするのではなく、依頼する側から希望する関わり方をちゃんと伝えるのが大事だと思います。それを面談時点からある程度でもしておけると、それに対する反応やコミュニケーションから、その人の特性や希望する動きをしてくれそうかなども見定められる気がしますね。こうしたことは、社員の採用ではなく、副業・兼業やフリーランスといった立場の方との仕事でこそ、より効果につながる人材活用とするためのカギなのではないでしょうか。コア社員と外部人材の組み合わせで、少数でも柔軟な組織体制をつくるという考え方― 今後も外部人材活用を活用していく予定でしょうか?すると思います。稼働パフォーマンスやコストの効率面での不安に対しても工夫の仕方が見えましたし、ゼロから教育したり働き方のマネジメントをしてあげないといけなくて手間取るということもなく、スピーディーに実働に入ってもらえる人に出会えると非常に助かるというのを実感したので、必要なポジションがあるときには積極的に募集検討したいですね。リソース課題への定量的な効果としても、「誰が全て担っていた業務の時間がこのくらい減らせた」というのが明確にわかるくらい実感できています。今回、初めての外部人材活用としては『スキイキ』のサポートも大きかったと思っていて、 “相談しやすさ” がありがたかったですね。募集の検討段階から「こういう業務でこのくらい稼働してもらうならどの程度の報酬設定がいいか」などの相談に乗ってもらえて、外部人材活用の相場感などは最初はわかりづらいこともあるので助かりました。その後も、応募があった候補者のスクリーニングや選定基準の助言だったり、契約・稼働後の人材とのコミュニケーションなどについても悩んだときに的確なアドバイスをくれました。これから検討される企業さんがいたら、「まずは相談しやすいサービスを使いながら、トライアンドエラーでやってみる」というのが良いのではと伝えたいですね。マッチした方と自社との相性やパフォーマンスは、結局は実際にやりながらではないとわからない部分もありますが、社員雇用ではないので固定的な制約も少ないですし、自由度が高くチャレンジしやすいという外部人材活用のメリットは活かしていいと思います。― 最後に、末廣さんから見た、外部人材の活用価値・理想像を教えてください。スタートアップビジネスで、柔軟につくりあげる組織体制がどんなものかというイメージの精度が高まりました。私たちの考え方としては、今のような少数精鋭の規模感では、コア社員にはジェネラリストとしての役割に重きを置く必要性が大きいと思っています。組織や事業の根幹に関わる最も大事なところは自分たちでリソースを選択と集中できるようにしないといけません。そのために、要所要所で必要な量だけ、高いパフォーマンスでコミットしてくれる専門の担当人材、いわばスペシャリストのような役割も必要で、ただしスタートアップではそうした個々業務はプロジェクトのフェーズによって “波” も顕著なので、外部人材のような存在が適している気がします。コア社員+外部人材という組み合わせの妙で、どのような状況にも対応しやすいチームビルディングが実現できるのではないでしょうか。