今回インタビューしたのは、求人広告・採用管理ツールの提供や静岡県最大級の転職・就職サイト「JOB」などを運営する、 株式会社アルバイトタイムス のカスタマーサクセス部、課長・尾田通康氏。きめ細やかな対応まで外注でカバーするのが難しいCS(カスタマーサクセス)業務において外部からプロ人材を採用・活用し、現在では他セクションの業務にまで広げて積極的にプロ人材と協働する事例として、活用における考え方をお伺いしました。業務委託という人材活用法が組織にとってどのような効果を持つか、また募集・面談や日々の協働時に役立つ同社の考え方をぜひ参考にしてみてください。既存スタッフへの変動的な負荷を減らし、優先すべきコア業務へ “選択と集中” するためにプロ人材活用を検討!― 御社の事業概要について簡単に教えてください。当社は、様々な採用支援事業を包括的に行う企業です。採用サイトを簡単に制作・公開できる採用管理システム、求人情報誌、転職情報サイトやイベント、人材紹介業(エージェント)など、人材領域のあらゆるサービスをご提供しています。― 今回、外部のプロ人材を活用した事業やその課題はどんなものでしたか。元々、どんな社内業務においても、必要に応じ効率的に業務量を圧縮することや、社内の既存リソースに依存しない形で安定的に運営できるような人材体制は構築していかないといけないという前提はありました。その中で、まずわかりやすく解決の必要性があったのが、私の管轄セクションでもある、採用管理システム(ATS)『ワガシャ de DOMO』のCS(カスタマーサクセス)業務です。既存の社員スタッフは何名もいるのですが、欠員の度に他のスタッフにその分の負荷が直接的にかかりやすいという課題がありました。家庭の事情や体調不良、退社など仕方のないものもさまざま含まれますが、CS業務は顧客企業さまのお悩みやご相談に対して能動的に、またスピーディーに対応していく必要があるため解消したいと思っていました。― 単に人手の不足ということではなく、チームとして適切に業務遂行できるような体制を目指していたということでしょうか。基本の対応業務をこなすだけで精一杯になると、お客さまに向けたCS業務として改善や向上にコミットさせていくための活動が停滞してしまうため、そうした事態は解消しないといけないというのが根本的な課題意識でしたね。そのため、元々は、事務的な業務中心であれば外部の方の力も借りやすいかなという考えで『スキイキ』でのプロ人材活用に踏み出しました。業務委託での人材活用自体は、会社的には今回が初めてではなく、過去に商品企画の部門などでスポット的には活用していたこともあったので、おおむねどんなものかという理解はありました。固定的な体制にはリスクあり?業務の標準化と人材活用の幅出しを両立するという考え方― プロ人材の業務委託活用は、御社にとってどのようなメリットがある手段でしょうか。端的に言うと、市場に影響を受けないような体制構築の柔軟性や、マッチングできる人材の幅を広げるための選択肢のひとつだと思っています。人材業界は、社会状況や景気の変動を受けやすい業態です。例えばこれまでもリーマンショックや東日本大震災、コロナ禍など、そうした出来事による停滞で求人ニーズは変わってきましたし、売上の計画も思うようにいかないことは度々あります。そのため、ニーズのピーク時に合わせた組織体制や採用方針で人的リソースを想定していると、コスト超過の問題が起きやすいのです。そうしたとき、固定的に自社の正社員だけでの運営を考えていると、なかなかコントロールのしようがなくなってしまいがちです。ピーク時でもそうでないときでも状況に合わせて柔軟にリソースを調整できるような状態というのが、安定的な業務進行、ひいては事業運営につながるので、そうした体制を常日頃から作っていく必要があると考えていました。― プロ人材への業務委託を検討する際に、どのように業務整理、切り出しを検討していますか?元々、当社サービスの代理販売をおこなっていただくパートナー企業(代理店)様に、ご協力いただいていることは多くありました。そのときに必要となるような、業務の基本設計やオペレーションの整理というのが、プロ人材の業務委託においても近いところがあります。まだこちらへの理解が浅い立場の方にもスムーズに把握でき業務遂行してもらうには、社内で当たり前になっているサービスの考え方や業務内容についてどうマニュアル等に可視化していくかが重要です。ビジョンのようなことも含めて、客観的にわかるよう標準化していくという意識ですね。そうした整理を元にすると、切り出しやすい業務は何か、ノウハウを取り入れるべき業務はどこかといったことは検討しやすいと感じます。代理店販売に限らず、そうした「社外に対して業務を可視化する」ような取り組みがもしあれば、その考え方は業務委託においても有用なのではないでしょうか。業務委託はプロセス自体にも学びあり?プロ人材との相互関係で成長も柔軟性確保も目指す― プロ人材との業務委託での協働は、どのような効果・成果実感がございますか。先ほどの通り、実質的に社内だけでなく外部にも人的リソースを保有するような形になり、既存のリソースだけに依存して体制や業務の改善について考える必要がなくなるということが大きなひとつですが、それ以外にも副産物があります。プロ人材の方に依頼するためにも行う業務の整理や標準化・マニュアル化というプロセスを通して、その業務の進め方やポイントなど、普段当たり前になってしまっていることが棚卸しされるという点です。これを活かすと、業務設計をさらにブラッシュアップしていったり社員への育成などにもつなげられると思います。結果、安定的な状態でないといけない基本業務における属人化を減らすことになる上、棚卸し・ブラッシュアップしたものをまた新たなプロ人材の方を起用した際の依頼時にもより良い物を使えることにもなる。蓄積によって良い循環をつくり、社員はもちろん組織としても成長スピードを上げられる気がしますね。― 求めている人材とのマッチングのため、募集要項の設計や応募人材との面談などで工夫されていることはありますか。スキイキで活用しながら体感したことでもあるのですが、先ほどの通りある程度固めておいた業務の切り出し、要件設計をベースにしながらも、応募をいただいた候補者の方に合わせてそれをカスタマイズしていくという視点も良いと思いました。最初に少し触れた通り、今回最初に行なったCSにまつわる業務募集は、あくまで顧客対応ではなく内部的な事務対応を想定していたのです。顧客対応よりも切り出しやすいものでもありますので。ただ、最終的に契約した方と面談時にお話をしていた際、事務対応だけではもったいないくらいにレベルが高く、こちらがしっかり依頼すればもっとコアな業務もしていただけるような方だと感じて、結局その方のスキルや経験にも合わせて依頼業務を調整したという経緯がありました。実際、その方が知見のある業界がちょうど当社においても課題感を持っている業界だったりもして、業界特有の切り口で顧客の利用満足度を上げるような対応をしていただける形にもなったと自負しています。分野によるところもあると思いますので、スキイキのような専門サービスに相談しながら検討するのが良いと思いますが、当社の場合、「業務要件はある程度整理しつつも、幅広めに募集原稿化して、候補者の方の特性に合わせて調整も視野に入れる」というのが重要でしたね。元々の要件整理、こちらの“型”に無理に当てはめて考えすぎないということが、プロ人材の方の力を最大限活かせるようなマッチングにつながることもあるのではないでしょうか。― プロ人材との契約後、日々の協働時に行なっている工夫などもあれば教えてください。社内でのコミュニケーション、業務報告・共有会などの取り組みには、外部のプロ人材の方にも同じように参加いただいて巻き込むということを行なっています。CS業務において顧客対応としてコアになるようなところを属人化せず、組織としてある程度一貫した品質・感覚で提供できるようにしたいという狙いがあり日頃から行なっているものですね。どんな対応や提案がお客さまに満足いただけたかや、こういう切り口の話にはこんな反応が出てきがちなので担当者それぞれが理解しておこうとか、外部のプロ人材の方も含めて同じよう共通理解を持つこと大切だと思っています。また、プロ人材の方のノウハウや知見が既存社員メンバーの学びになり、逆にプロ人材の方にも他の人の話から発見を得てもらうというように、相互の関係性を大事にしたいと思っての工夫でもありますね。本当に事務的な単純作業をお願いしているわけでもないので、意識的にも業務的にも、外部の方だとしてもチームとしての連携はできると、結果的に長期の関係にもつながってくる気がします。単に外注のようにタスクだけ押し付けていたら、困った時に柔軟にサポートしていただけなくなっても仕方ないですよね。外部だけど外部じゃない?仲間としての関係づくりを意識した活用の大切さ― 現在はCS業務以外でもプロ人材活用を広げてられていますが、浸透のためのポイントは何でしょうか。雇用(社員)か否かということに対するイメージや線引きのような観点だと個人差があるので難しいですが、当社の場合、プロ人材の方がどんなことをどれくらい対応しているのかという定量的な業務面の可視化はされています。業務委託だけを対象にしたものではないですが、全スタッフの活動状況がわかる管理表のようなものが元々あり使っているという形です。そのため、誰が見てもそのプロ人材の方の稼働実績はわかり、何をしているのか不明瞭という状態にはなりません。あとは、定性的な面については、先ほどの通りですが「既存の社員スタッフと同様のコミュニケーション環境を設ける」ということも大事なのかもしれません。ただでさえリモートで稼働してもらうことが多くなるので、それすらないと「誰もちゃんと見たことや関わったことがない」という印象が残ってしまいかねないですよね。外部の人ではありつつ、関わり方は単なる外部の人としてではなく、チームの一員として、ミーティングや簡単な面談などで関係性をつくっていくということが、結果的にモチベーション維持のためだけではなく組織への影響力も持つ可能性はありますね。― 最後に、プロ人材活用にあたって『スキイキ』にご満足いただけている点があれば、ぜひ教えてください!利用する上で、スキイキのCSの方に細々サポートしていただくのですが、前向きに併走スタイルで対応いただけるというのがありがたいですね。使わせてもらう方として業務委託について完全に理解できているわけでないのはもちろん、当社よりもっと不安を持ちながら活用し始める企業さんもいらっしゃるでしょうし、フットワーク軽く、些細なことでもミーティング等でも教えていただけるようなサポート性というのは抽象的なようですごく大事だと感じます。また、やはり業務委託契約にあたって雇用契約とは異なる気を付けるべき点も多少あるので、プラットフォームとしてのアカウント提供だけではなく、そうした事務的なところの確認や情報提供も細やかに行なってくれるサービスを利用できれば慣れていなくても安心して取り組めると思います。