環境変化が激しく不確実性の高い時代において、多くの企業が中長期的なビジネスの成長を見据え、営業改革に舵を切っています。しかし中小企業では、メンバーが固定化し、属人的な営業スタイルからなかなか脱却できないといった悩みを抱える企業も少なくありません。本記事では、2022年12月14日開催のウェビナー『脱・属人営業へ! 継続的に成果を上げる「チーム営業」への変革とは?』の内容をもとに、 営業マンを取り巻く環境変化の背景から、今求められるチーム営業に変革するためのステップをお伝えします。投影資料(全編)のダウンロードリンクも用意しましたので、ぜひあわせてご活用ください。登壇者紹介古賀 優営業コンサルタント某大手事務機メーカーにて、民間企業および公共市場や代理店営業など様々な市場とチャネルを営業・マネージャー・部門長として経験。また、約7,000名の営業に対する販売プロモーションを企画運営、現場ノウハウを理解した施策展開を行う。こんな方におすすめの内容です中小企業の営業マネージャー、経営層の方営業部長など特定の人への売上依存度が高く課題を感じている方新しいメンバーの早期育成、独り立ちを加速させたい方20代の若手がいない、辞めてしまう、活躍できず育成が課題セールスイネーブルメントの基本が知りたい営業組織構築の最新トレンドが知りたい顧客の購買行動の変化がもたらす営業活動への影響と課題営業活動の変化を考える上では、EC販売の増加が背景として大きく挙げられます。コロナ禍でBtoBの市場は少し下がったものの、企業間取引のデジタル化の浸透により市場成長は加速しています。そのような状況下では、営業活動への影響が大きく3点あります。1つめは、ECの拡大によって顧客自身が持つ情報が拡大している点です。商品情報に限らず、口コミなども入手できるため、顧客にとっては効率的に情報収集できる反面、営業の立場では商談の背景や商品の導入理由をアピールする機会が減ってきていると言えます。そのため、顧客は自社にとって何が必要なのか?を悩むケースが出てきており、営業としては「お客様が何を求めているか。課題の重要性はどのくらいか。」などの解決力が必要になってきています。2つめは、購買行動の変化、つまり顧客と営業の関係性が変化し、営業には顧客が購買検討を開始するタイミングが見えにくくなっている点です。従来は、営業が持っている様々な情報を紹介し、社内検討や稟議に必要な情報を顧客が集めるといった関係性が成立していました。しかし、最近では相談する機会が減少しており、営業ではなく経営の知識がある専門性を持った人に相談するケースも多いと言います。そのような中では、様々なチャネルの悩み事を聞けるように、営業として顧客との協業化が必要になってきています。3つめは、技術の進化による、顧客が抱える課題の複雑化です。高スペックの商品が市場に溢れ、商品差がなくなってきているほか、企業自体が分業化・専門化が進んでおり、より課題が見えにくくなるという現状があります。営業としては、顧客情報を知ることはもちろん、顧客が聞いた情報から仮説を立てていくことで、商談獲得に至ると言えます。昨今、中小企業の中で、30~50代で社長に就任した方の約7割が営業経験を持っており、自身の経験から見たときには、「今の営業は10分の1しか売れていない」「採用したのに辞めてしまった」「営業が育たない」「営業力がつかない」などの悩みを抱えていると言います。また、社内で一部の社員が売上をリードしているものの、ほかの営業は成長が望めないと言う課題を抱えているケースもあります。ここで押さえておきたいのが、営業は人を相手にするので、そもそも属人的な仕事であるということです。相手の仕事観や価値観などを理解した上で、課題を把握するので、営業それぞれの主観に基づいて活動をする必要があります。主観を刺激し、自律する活動をしていなければ成果が出ない要因となるでしょう。また、営業はどの企業でも約2割がトップ営業で、実績の8割を占めると言います。トップ営業マンは、「誰がどんな形で話しているか」「いつ営業に行ったのか」「誰と会ったのか」など、顧客データや訪問履歴を使って営業をしているほか、想定外の対応や主観的な考えで、お客様の価値や仕事に対する責任度合いなどを考慮するなど、商談を獲得する技術を持っています。それらの属人化した営業の技術を社内のメンバーに共有する必要が出てきているのが、昨今の動きと言えるでしょう。時代の変化に対応した営業体制への変革方法ここからは、営業体制を変革する上でのステップについてご紹介します。標準的な営業のプロセスは以下の図にあるような流れです。ここから3つのステップを押さえて、営業体制を見直すことが重要になってきます。【STEP-1】お客様中心の営業スタイルまずは従来型の「商談をもらう営業スタイル」から、「商談を提案する営業スタイル」へと変えていく必要があります。自社の商品やサービスに付帯する営業ならではの力や技術を発揮し、商談を獲得していきます。具体的には、顧客の様々な人脈と面談するほか、お困りごとから自社が解決できる方法を提言します。商談のスタートに遅れがなく、購買時期も把握できるメリットがあり、他に独自提案によって粗利が高くなることも期待できるでしょう。この営業スタイルをとれば、一過性で終わることなく、顧客の相談相手として認知され、継続的な関係性を作れることがポイントになります。商談を提案する営業に必要な要素としては、以下の4つが挙げられますが、1つめと2つめは顧客、3つめは自社、4つめは社内のオペレーションについて理解を深めていくと良いでしょう。特に、顧客の先の顧客のところまで考え、整理し、どのようなアプローチが必要なのかを検討していくという点に着目し、社内で共有していくことがポイントになります。【STEP-2】チーム営業への脱皮ベテランの営業マンが持っている経験やノウハウは、以下のプロセスで属人化していると考えられます。顧客ごとに交渉したり、仮説を立てていることもあり、標準化がなされていない場合が多く、また営業の評価基準が実績中心ということもあり、プロセスを共有する機会がないと言えるでしょう。チーム営業へ移行するためには、このようなベテラン営業の持っているアプローチ・ノウハウを言語化し、文章やツールに落とし込み標準化を図ることが大切です。その際、プロセスごとに評価基準を設けたり、メンバー同士で共有して結果を認め合うような組織にすることが一番の近道でしょう。このようなチーム営業が確立してくると、持続的に商談を作ることができます。というのも、顧客の課題は経営戦略から始まり、業務運営まで、経営者が実施したいことを戦略化して部門や担当に落とし込んで行くため、現場とのギャップが生まれるからです。このようなギャップの部分から生まれる課題を解決するための商談を積み重ねることがポイントになってくるでしょう。そう考えると、仮説検証を進めたり、定常的にチームメンバーで意見を交わしながら能動的に動けるチームを作っていくことが成果につながると考えられます。【STEP-3】推進力を上げる最後のステップは、よりチーム営業の活動を推進していくために押さえておくべきポイントです。従来のマネジメントスタイルは、マネージャーが経験したことを指導する方法で、即効性がある反面、メンバーが腹落ちしていない場合もそのままになってしまうこともしばしばあります。一方、チーム営業によりメンバー同士で賄うような活動をしていくと、自走化への後押しにもなりやすいと言えます。マネージャーは1人1人の考えを尊重し、共感することを意識し、メンバーに応じて実施状況のフォローやサポートを行なっていくと良いでしょう。そうすることで、メンバー自身が他のメンバーと一緒に考え、仕事に対して動機付けを行ったり、活動に関して腹落ちしながら動いていける環境が作れます。チーム活動をしていくと、営業スキルはもちろんのこと、マネジメントスキル、やる気の元となるスキルが社内に蓄積されていくことがわかります。顧客を知り、関係を構築、マーケットセンスを磨くなどといった営業として求められるスキルに関して、チームでノウハウを共有することによって1人1人の成長に繋がることが見えてきたと思います。また、マーケティング力や商品訴求力、そもそもの基礎知識などの部分も掛け合わせることによって、営業力はさらに向上すると考えられます。ただ、これらのスキルはすぐに向上することは難しく、通常業務を進めながらではリソースが足りないということもあるでしょう。そういった場合には、一部を外部人材に任せるなどすることも視野に入れて、チーム営業への変革に向けた取り組みを進めてみてください。いかがでしたか。属人化した営業を、チーム営業へ変革する方法について具体的にご紹介してきました。現状の営業体制を見直すと同時に、3つのステップに沿って個々の営業が持つノウハウを共有して、より成果につながるチーム作りの一歩を踏み出してみてくださいね。