自社の商品やサービスについて、販売促進の強化などのために「マーケティング」のノウハウが重要視されますが、同時によく掲げられるのが「ブランディング」の分野です。しかし、ブランディングは、マーケティングほど体系化されたメソッドを学びづらく、何を参考にして取り組めばいいのか難しいというケースも多いと思います。本記事では、2023年4月19日開催のウェビナー『レクサスのリブランディングに学ぶ! 基礎からわかる“ブランド戦略講座”』の内容をもとに、初めての方でも基礎からわかるブランディング実践のための考え方、そして手順の概要・ポイントについてピックアップしてお届けいたします。投影資料のダウンロードリンクも用意しましたので、ぜひあわせてご活用ください。登壇者紹介小川 英輔トヨタ自動車入社後、SUV車の商品企画、トヨタブランド車種のローンチ/販促キャンペーン企画や広告コンテンツディレクション、メディアプランニング、市場/ユーザー調査などマーケテング領域に長く従事。2013年よりレクサスブランドのブランディング業務に従事し、TVCM、WEB動画、イベント、コレクショングッズ等の企画や、KPI/KGI管理に携わる。現在は総合商社にてコーポレートブランディング業務に従事。こんな方におすすめの内容です効果的に自社やサービスのブランド価値を高めるノウハウ、手順をコンパクトに知りたい企業の方ブランディングの本や記事はたくさんあるけれど、どれを読むのが良いのか分からないという方マーケティングのように体系化された情報が少ないので、ブランディングの基礎から押さえたい方ブランドとは?ブランディングとは?まずは、そもそも「ブランド」や「ブランディング」とは何なのか、何のために行われるのかということを簡単に整理しておきましょう。ビジネスにおいては当たり前に使われる言葉でもありますが、その意味は抽象的なところもあり、人によってぶれることも少なくありません。ある定義によれば、それぞれこのようにまとめられています。便宜的に「ブランド」という言葉は商品やサービスそのものを指して用いられことがありますが、そうではなく、商品やサービスが提供するイメージや価値のことと言えます。また、「ブランディング」というのは、そうしたイメージや価値を構築し、実際に消費者・ターゲットに対しそれを表現し評価を得るための活動ということになります。ブランディング活動の意義と手段についてもおさえておきましょう。抽象的に思われやすい分野のため、「なぜブランディングが必要なのか」と理解されづらいこともあると思いますが、先ほどのようなブランディングの意味を踏まえると、「信頼を生むため」という一言に集約できます。それによって、例えばリピーターの増加、価格競争からの脱出、口コミのような自然的な宣伝・波及などを目指せるようになる、重要な取り組みだと言えます。そして、ブランディングの手段というのは様々です。従来は、マスメディアの活用、例えばテレビCMなどをイメージされることもありますが、デジタルメディアが発展した今ではそれに限りません。大規模な予算を必要とせずともあらゆる手段を駆使することができますので、広告という手段に縛られないようにしましょう。ブランディングの実践ステップ・ポイントでは、「ブランド」「ブランディング」の前提を踏まえて、実際に活動に落とし込んでいく手順を見ていきましょう。大きくは3つの流れに分けて考えることができますので、今回はそれぞれの要点をコンパクトにお伝えしていきます。【STEP-1】調査・分析まず最初のステップは、戦略を策定するための土台を分析によって整理します。基本は下記3つの視点をもとに分析を言語化していきましょう。自社分析:自社の強みは何か?顧客分析:顧客のインサイトは何か?競合分析:競合と差別化できることは何か?これらは「Company(自社)・Customer(顧客)・Competitor(競合)」という頭文字をとって「3C分析」とも呼ばれます。この分析の目的を一言にまとめると、「自社の強み」を生かし、「顧客のホンネ」を探り、「競合と差別化」できるところを探すためということになります。「自社分析」における要点は、自社ならではの「強み」を明確にすること、ひいては選ばれる理由を可視化することです。このプロセスにおいては、自社・自分だけでは分かっていないが、他社・他人は知っている・気付いているということもありえます。場合によってはその逆に、自分たちでは強みだと思っていたが、客観的には強みというほどではなかったということもあるかもしれません。可能な限り、あらゆる角度・立場から多面的に分析してみるとよいでしょう。「顧客分析」における要点は、インサイトの深掘りに尽きます。この言葉もよく聞くものではありますが、形骸化してしまっているケースも珍しくありません。インサイトは “心の奥底にある本音” のようなもので、「潜在的ニーズ」とも言い換えられます。その対極である「顕在的ニーズ」、つまり顧客も自覚しているような考えというのは、多くの場合で他社も把握できているものであり、そこだけで差別化を図ろうとするのは現実的ではありません。そのため、インサイトをいかに緻密に、早く把握するかということが強いブランドづくりにつながっていきます。インサイトを見出すのは難しい作業でもあります。深層心理を探るような行いなので、単なるアンケートやユーザーボイスなど、顧客がすでに自覚していることを整理するだけではインサイトとは言えません。テーマに対して「なぜ?」を深掘りしたり、仮説と確認を繰り返していく、そうした思考的探究が必要です。「競合分析」における要点は、自社・ブランドが「どの位置にいるか」「どのように戦うのか」を見極めるということです。それによって市場での戦い方は変わります。例として、有名なコトラーのマトリクスを挙げました。経営資源を軸に、その量の多さ・質の高さによってブランドを4つのポジションに分類しています。例えば、左下の「チャレンジャーブランド」であれば、差別化に主眼を置いて競争力を高め、その上の「リーダーブランド」のポジションを目指していくのが有用になり得ます。あるいは、右下の「フォロワーブランド」であれば、価格競争によって苦しい状況にもなりやすいため、特定領域・特定顧客層に向けた専門性を強化して「ニッチャーブランド」を目指すという戦略が考えられます。このように、3つの観点に分けて、調査・分析をしていくことがブランディング活動の第一歩です。この準備作業によって、「自社分析」「顧客分析」「競合分析」によって重なったことを見つけることが重要になります。中でも、自社(の強み)と顧客(のニーズ)の重なりは、競合も入り込めていないブルーオーシャンと言える可能性があります。【STEP-2】ブランド戦略策定次のステップは、策定すべき戦略を具体化していく段階です。ブランドとして目指す姿、つまりブランドの中心となる考え方(中核概念)を明確にしていくためのプロセスです。ブランドの中核概念を明確にするということは、ブランドとして提供する価値を言語化することと言い換えられます。では、ブランドの提供価値とは何か。大きくは下記の3つに分解できるものです。機能的価値:機能・スペックやそれによって得られるベネフィット情緒的価値:体験して得られるポジティブな感情自己表現価値:体験して得られる自己表現や自己実現感一般的には「機能的価値」が最も分かりやすく、また重要でもある観点ですが、それだけでは差別化や優位性を確立することにはつながりづらくなっています。多くの業界で商品やサービスが飽和した今では、「情緒的価値」や「自己表現価値」の重要性がより高くなりました。こうした整理を踏まえて、先ほどの3C分析とも照らし合わせ、顧客にどんな価値をもたらすのかを言葉にしていくことが重要です。【STEP-3】ブランド戦略実行最後のステップとして、策定した戦略を実行・実現させる段階に入ります。ここでのポイントは、「いかに策定した戦略をより高い精度で実行できるか」になります。そのためには、ブランドの “らしさ” を、一貫性をもって逸脱しないよう表現・露出させていくことが重要です。ブランドの “らしさ” を正しく確立するためには、そのためのブランド要素(ブランドを構成するための各要素)まで落とし込み、それらを徹底して実行物に反映させていくことになります。ブランド要素は、「視覚的要素」や「言語的要素」を中心として構成できます。【視覚的要素】ビジュアルアイデンティティ(VI)とも呼ばれ、ブランドの統一感を保つために、目指す姿に則ったデザイン要素・方針【言語的要素】ブランド名、タグライン、ステートメントなど、キーワードや文章によって目指す姿を表す要素・方針これらの他にも、商品やサービスの特性・形態によっては、感性に働きかけるようなものもブランドを構成する要素になり得ます。そして、イメージ通りのブランド表現を実行に移すために必要な工程はいくつもあり、全てをさらに深く掘り下げていくこともできるのですが、今回は簡潔にだけ紹介します。ブランディングの実行においては外向けのアクション、つまり「アウターブランディング」に注目が行きがちですが、実際にはそれだけではありません。一貫性のある訴求、つまり施策や媒体によってバラバラのコミュニケーションで伝わらないようにするためには、視覚的要素・言語的要素に関する「ガイドライン」を定めておくとよいでしょう。一貫性のないコミュニケーションでは、受け取るターゲットに対してイメージさせたいことが、受け取った人の頭の中に蓄積されません。また、ブランド戦略は定めた人だけが理解できても意味がありませんので、関わる従業員などにもそれらを理解・浸透させ、方針として守れるようにするための「インナーブランディング」も必要です。そして、やりっぱなしではブランド戦略は実現されませんので、「効果検証」によって断続的により良いブランドに育てていくことが欠かせません。効果検証にあたっては、このようなファネルの図で考えるとわかりやすくなります。ブランディング活動とは、ターゲットの人々を少しずつ下から上の層へ持っていくことだと集約できます。今、それぞれの層にどのくらいのターゲットがいて、そしてどのような決め手で変化していくのかということについて、定期的に調査しながら、それらの原因と対策を練っていくことになります。まとめさて、今回お伝えしたブランディングの基本・手順にあたってのポイントをまとめます。まずは何より、最初のステップで「調査・分析」をしっかり行うこと、特に自社の強みと顧客のニーズが重なり合い、かつ競合他社とは差別化できるブルーオーシャンの部分を明確にすることが始まりになります。とはいえ、ブランディングという取り組みが見るべき範囲は広いため、そうした工程をひとつずつ質も高く行っていくためには経験やスキルも重要になってくると思います。今回のような基本は社内でも押さえつつ、精通したプロフェッショナルをアサインして挑戦してみると、社内でのスキルアップにもつながったり、短期間でアウトプットのレベルも高まるはずです。実際に取り組んでいく場合は、そうした客観的な立場による視点・知見を入れるも選択肢として持っておくとよいでしょう。ダウンロードできる投影資料では、各工程におけるレクサスでの事例なども含め詳細にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください!ウェビナー資料を無料でプレゼント!上記で一部掲載している登壇資料や、私たち『スキイキ』のサービス案内資料、スキイキに登録しているプロ人材のモデルケース集、人材活用の前に整理したいポイントをまとめたワークブックなどを無料でご覧いただけます。ぜひ、以下のボタンよりダウンロードしてみてください。