副業・フリーランスなどの外部人材を活用する企業はますます増えてきているものの、実際の現場にフォーカスしてみると、そもそも外部人材に馴染みがないケースや、外部人材をアサインしても準備が整っていないケースなども少なくありません。今回は、そもそも外部人材がどのような存在なのかを整理するとともに、活用に向けて特にマネジメント層が押さえておきたい前提や、チーム全体で準備したい点を中心に「スキルシェア」の考え方を解説します。外部人材活用の成功に向けて、参考にしていただければと思います。"スキルシェア” の考え方の基本まずは、外部人材に関して整理しておきましょう。そもそも外部人材活用とは、雇用ではなく業務委託による人材活用のことです。具体的には、フリーランスとして仕事をしている人材や、会社員として本業を持ちながら副業として業務を請け負う人材などを指します。正社員をはじめとする社内人材を適材適所に配置したり、人材育成に力を入れたりすることで、新規事業立ち上げや人材不足に対応してきた企業も多いでしょう。しかし、様々な業界で人手不足やノウハウ不足が課題となっている今、正社員にこだわらず、優秀な外部のプロ人材のスキルやノウハウをシェア(共有)しようという「スキルシェア」の考え方が注目されているのです。経産省による推進資料『外部人材活用ガイダンス』では、以下のように外部人材と、雇用やコンサルティング企業との相違点を比較しています。業務を進めていく現場視点で見れば、外部人材は専門性があり、社内にはないノウハウを取り入れられるはもちろんのこと、実務もあわせて依頼できるというのが特徴です。専門性という点では、コンサルティング企業などへの外注でも同様の課題解消に取り組めますが、発生する実務は基本的に社内人員で担う必要があったり、またノウハウの蓄積までは難しかったりするケースもあります。それらと比較すると外部人材の活用は、チームメンバーの一員として実際に手を動かしてもらいながら協働し、ノウハウもリソースも補うことができる可能性を持っているのです。また、押さえておきたいのが外部人材というのは「自律性」「独立性」を前提とする形態だという点です。正規雇用(正社員)とは異なり、一方的に指揮命令をすることはできません。法人間取引と同様に、フラットな関係で協業し、スキルの部分に目を向けて柔軟に共有できるような体制づくりがポイントになってきます。ひとつのチームやプロジェクトを動かしていく上で社内外を問わないメンバーとしての体制化、つまり「チームビルディング」の考え方を大事にし、「単純な業務の受発注ではない」関係性を築くこことで「スキルシェア」をうまく進めていくことができるでしょう。外部人材活用の検討前に押さえておきたい3つの準備ここからは、実際に外部人材を活用する前に確認しておきたい事項をご紹介します。外部人材の経験やスキルを最大限発揮してもらうには、企業側の準備やコミュニケーションなどが重要なカギを握ります。そのため、あらかじめ必要なポイントを理解しておきましょう。契約前のチェックポイントまずは、外部人材との契約関連で注意したいチェックポイントをご紹介します。外部人材は正社員とは異なり、「雇用契約」ではなく「業務委託契約」を結びます。外部人材の業務範囲や稼働時間、報酬といった条件を擦り合わせて明文化することで、トラブルにならないようにする必要があります。また、以下のチェック項目を基本と押さえると同時に、法律など最新の情報にもアンテナを張っておきましょう。業務遂行にあたっての指示や命令の強制力はない勤務場所の指定や時間の拘束はない報酬の基準は業務時間ではなく、成果に対して決定される有給や残業手当などの制度はない業務に必要な経費や機材などを会社が負担していないフリーランスとの取引に関連する法律としては、公正取引委員会が制定した「下請法」(下請代金支払遅延等防止法)、内閣府が発表した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」があります。また、「フリーランス保護新法」といった新たな法案成立へ向けた動きも見られます。そのため、企業に課せられる義務があるのかどうかなど、情報収集は欠かさず行いましょう。マネジメント層が外部人材と信頼関係を築くためのコツ次に、特にマネジメント層が押さえておきたい外部人材活用の際のマネジメントのポイントを紹介します。先述のように、外部人材の力を引き出すためには「業務をタスク単位で外注している」というアウトソーシング的な捉え方ではなく、チームの一員として関わることが重要です。この図のように、委託する業務・役割の特性に応じて企業やプロジェクトの目的、具体的なゴールを伝えることを意識しましょう。中長期的に主体性を持って業務に携わってもらったり、社員と同様に帰属意識や責任感を持って同じ目線で働いたりする上では、このような前提の考え方を外部人材と共有できるかどうかがチームの成果にも大きく関わってきます。目標設定や具体的な業務プロセスを擦り合わせる前に、方向性の確認をしておきましょう。チーム全体で意識したいコミュニケーション文化・体制作り最後に、マネジメント層はもちろん、チームメンバー全体に共有し、自主的に取り組みたいコミュニケーション体制についてご紹介します。外部人材の豊富な経験やスキルを引き出し、チームメンバーが刺激を受けて、学び、ノウハウを蓄積するためには、メンバー同士のコミュニケーションが重要です。コミュニケーションの体制としては「マンツーマン型」「チームメンバー型」「インサイダー型」などがあります。外部人材に依頼する業務内容やそのレベルにもよりますが、例えば、依頼業務が簡潔であったり納品物が明確なタスクが中心の場合はマンツーマン型で、依頼業務がより高度でコンサルティング的・ノウハウ中心の支援をしてもらう場合であればあるほどインサイダー型のコミュニケーション体制が適していることが多いでしょう。そしていずれの場合も、外部人材がチームメンバーと実務のやり取りもしやすいよう、定期的にコミュニケーションの場を設けたり、チームリーダーやマネージャー層がその外部人材のことを最も理解しチーム全体と馴染みやすくしていく工夫ができるとより効果的です。オンラインでのやり取りも少なくない今、コミュニケーションツールの活用方法や、コミュニケーションをとる上で必要なチームの共通認識なども外部人材に欠かさず共有するなど、お互いが理解しやすい準備をしておくとよいでしょう。外部人材活用で生まれる企業&人材の成長の芽外部人材活用について基本的特徴や活用前のポイントを解説してきましたが、ここからは実際に活用するメリットをご紹介します。【メリット1】必要な技術、ノウハウや人材の獲得人材不足が加速する中、専門性の高い人材の力をシェアして活用できる点では、企業やチームにとって大きなメリットになるでしょう。チームの一員として、業務の中でノウハウをシェアすることが可能なので、必要なスキルを補うだけにとどまらず、チームメンバーのスキルアップに繋がると言えます。【メリット2】資金や時間の節約に繋がる点新規事業の立ち上げプロジェクトなどでは資金や時間が限られいることも多く、既存のメンバーで業務で試行錯誤するケースも少なくありません。しかし、専門知識が必要な場合には即戦力となるプロの人材を活用することで、スピード感のある動きや、法人へ依頼するよりもコストを抑えることが可能になるなどのもメリットもあるのです。【メリット3】社員の業務量・負担の軽減外部人材に専門領域の業務を任せることで、社員は他のコア業務に集中しできるというメリットがあります。そのため、チーム全体で見た時に、適材適所で役割分担しながら協業でき、業務効率化を図れるでしょう。また、外部人材の方から業務効率化の提案をしてもらったり、客観的な視点からアイデアを提示してもらうことで、より成果に繋がる組織体制を作れるとも言えます。【メリット4】柔軟な人材活用企業の成長フェーズや、事業・プロジェクトのフェーズに応じて、柔軟に業務量や稼働時間を調整して最適な組織体制が作れるところも外部人材活用のポイントです。企業やチームの成長過程に合わせて外部人材のスキルや経験を活用し、チームにも良い影響を与えられる可能性を持っているのです。このように、外部人材を積極的に活用していくことで、会社をコンパクトに保ち、スピードと柔軟性を確保しつつ新しいことにどんどんチャレンジできる体制をつくることができ、企業やチームの成長に繋がるのが見えてきたと思います。現場においても、チームメンバー同士で正社員や外部人材人材分け隔てなくコミュニケーションを取りながら連携することで、お互いの強みや弱みを理解したり、スキル以外にも業務の姿勢や考え方など、学べる点も多いでしょう。また、外部人材側の目線に立っても、その業界の知見や実績が増えたり、自身のアイデアを実現する経験機会となったり、チームで取り組むからこそのメリットもあります。マネジメント層は、外部人材が持つ力を引き出すために、チームでのコミュニケーションや信頼関係構築の要となったり、個々の成果を共有する場を作ったり、チームも人材も成長していく土台の整備を意識して行う必要があるでしょう。