今回は、最近ニュースで取り上げられて注目を集めている「フリーランス保護新法」についてお届けします。政府主導で、組織に属さずフリーランスとして働く人の保護を目的とした法律を制定する方針を示し、2022年10月の臨時国会での成立を目指すというニュースに対し様々な意見が挙がっています。フリーランス保護へ法整備 政府、一方的な契約変更防止 - 日本経済新聞本記事では、話題のニュースの概要や背景、世の中の反応についてご紹介しながら、今後企業がフリーランスや副業人材を活用する際に必要になってくるポイントを改めて解説します。業務内容や報酬の明示を義務化!新法案の概要まとめ今回の件が “新法” と言われているように、公正取引委員会が制定した「下請法」(下請代金支払遅延等防止法)によってフリーランスを保護する法律、もしくは「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」というのは今までも策定されてきています。では、今回の法案はそれらとどのような違いがあるのか。予定されている概要と法整備の背景を見てみましょう。■対象:フリーランスと取引するすべての企業■時期:2022年10月に「フリーランス保護新法」成立を目指す■概要:主に下記3つの義務化 ①業務委託の開始・終了に関する義務 └業務依頼する際に報酬額や内容、納期などを明示し、契約の書面や電子データの交付を行う。 └契約後の中途解約や契約更新をしない場合は原則30日前までに予告する。 ②業務委託の募集に関する義務 └フリーランス募集の情報は正確・最新の内容に保ち、条件明示・契約内容が異なる場合には説明が必要。 ③報酬の支払に関する義務 └業務提供を受けた60日以内に報酬を支払う。違反した場合、公正取引委員会などが調査や勧告を行い、必要に応じて報告命令や立ち入り検査を行う。 └一定期間以上の間の継続的な業務委託に関しては、7つの「取り組むべき事項」を設定。■主な狙い: フリーランス労働人口が増えているものの、その約4割はトラブルを経験しているという状況から保護するため。 また、現行の「下請法」では、発注者側が資本金1000万円以下の場合に取り締まりの対象とならないため。上記のように、新法ではフリーランスと取引する全ての企業が対象です。発注企業に対し、報酬・業務内容・納期などの明示、契約書面や電子データの交付を義務付けています。また、フリーランスがトラブルなく安定的に働くことができるようにする目的で、報酬支払いの期日を60日以内として設定するほか、企業に対しての禁止事項・ハラスメント対策や出産や育児、介護などとの両立への配慮などを求める「取り組むべき事項」も併せて整備する方針とのことです。これまでも「下請法」によってフリーランスを含む下請け事業者への書面交付は義務付けてきていますが、あくまで資本金1,000万超の企業が対象であり、実際にフリーランス取引が多い中小事業者は抜け穴ともなっていたのが現状。また、内閣府が発表しているガイドラインも法的な拘束力はないため、それを発展させる形で今回の法案成立を目指す形になっています。新法が成立すれば、企業としては従来のフリーランスとの取引を見直し、業務委託する際に新法に則った手続きをする必要があるでしょう。なぜフリーランス活用に焦点が当たるのか?企業にとっての4つのメリット新法によって「フリーランスと取引がしづらくなるのでは?」「正規雇用や法人との取引で充分では?」と考える方もいるかもしれません。しかし、人手不足や労働人口減少に伴い、多くの企業にとってこれまでの採用戦略を維持するのが難しくなっているという実情もある中で、フリーランスや副業といった “外部人材” の活用は欠かせない選択肢としてニーズが高まり続け、今回のように政府が主導するほどのトピックになってもいます。改めて、フリーランスや副業人材を活用するメリットは何なのか、基本的な4点だけでもおさえておきましょう。経産省による推進資料『外部人材活用ガイダンス』で解説されている中から、実際に直面しやすい課題に即した主なメリットが下記になります。【メリット1】社内人材だけではカバーできない専門スキル・ノウハウ・経験などを活用できる、職能獲得という側面。【メリット2】一般的な採用でハイスキル・即戦力人材を獲得するのに比べ、高い職能を活かしてもらいながらも固定費や時間を削減しやすい、費用・採用リソースの節約という側面。【メリット3】外部人材に専門領域の業務を任せることで社員はそのほかのコア業務などに選択と集中をしやすくなる、業務効率化という側面。【メリット4】企業の成長フェーズや事業・プロジェクトの進捗状況などに応じ、柔軟に依頼・発注する業務稼働ボリュームを調整しやすい、人員・体制調整という側面。中でも、上記の2つ目にあたる、一般的な新卒・中途採用が厳しくなってきたことを踏まえての人的リソースの確保・補填の意図、またそうした正規雇用にかかるコスト・時間的リソースを踏まえての対策として、外部人材活用を検討し始めるというケースが多く見受けられます。あるいは、想定する対象職域・業務を他社に外注した場合のコストなどと比較検討する場合も少なくありません。いずれにしても、外部人材活用の最初の基準はあくまで単純な “人手” や “コスト” の観点であり、社内で賄えないものを効率的に補う選択肢のひとつとして検討されてきているのが珍しくないということです。しかし実際には、改めて現状の人員体制・チームを見直してみると、そもそも業務内容に関する知見・専門性や、業務設計・フロー次第では人的リソースは想定していたほど必要ではないという場合もあり、3つ目の業務効率化の側面や、4つ目の人員・体制調整という側面でも、活用次第でメリットは生まれやすい取り組みと言えます。そして何より、それを実現するために最も重要なのが、1つ目の職能獲得という側面、つまり「外部人材に対してはそのスキル・専門性のメリットを重視すべきである」という視点であり、トラブルが発生しているケースにおいては発注企業側からこの前提が不足していることもあると考えられます。現に、それほど大所帯ではない組織・チーム編成でも成果を上げているビジネスは多く存在しており、特に体制や予算の制約が多くなりがちな新規事業開発などでは注目が集まることも珍しくありません。そうした事例においては、まず関わる個々人員やステークホルダーのノウハウが集積することで結果的に「人手不足」状態を抜け出していると言え、そうしたスキルを獲得するためにも人材獲得の手段を狭めないことが寄与していると考えられます。同時に、これまでの「人手不足」という感覚は、従来のメンバーシップ型雇用や、それに準ずる従属性ありきの採用戦略が基準となって生まれているとも捉えられます。これからの人材活用戦略を考える上では、スキルやノウハウ、業務設計の最適化という観点に着目して検討する時期にきているとも言えるでしょう。認識のズレをチェック!フリーランスをはじめとした外部人材の特徴3選既存の組織体制のまま人材活用も考えがち。そしてフリーランス・副業人材をはじめとした労働形態そのものに関しても認識のズレがあったり、事実と異なる噂を信じてしまっていたりすることも少なくありません。巷でよくある勘違いを見直すためにも、こうした外部人材という存在に関する特徴をおさえておきましょう。先述の経産省資料では下記のような比較解説がされていますが、それも踏まえて要点をまとめます。【特徴1】外部人材の働き方は「自律性」「独立性」が前提これは最も認識のズレを生まれすい点のひとつです。単なる社員・正規雇用の代替として捉えられていることもありますが、業務委託契約での取引にあたっては、外部人材は特定組織に従属する立場ではありません。体制上の指揮系統はあっても、具体的な業務方法などについて一方的に指揮命令・制約・監視する対象ではないということになります。つまり、一般的な法人取引に近いと考えるとイメージしやすいと思います。行うのは "雇用" ではなく "取引" であり、彼らが受け取るのも “給与” ではなく ”報酬・対価” です。フラットな関係性で協働していきましょう。【特徴2】外部人材活用の検討基準は「スキル」が重要前述の通り、外部人材活用で最も意識すべきなのは、社内にないノウハウ(知見・専門性)を戦略や戦術レベルで、あるいは具体的な業務方法レベルでも取り入れられる可能性があるということです。そのために着目すべきは彼らのスキルであり、一般的なメンバーシップ型の人材戦略・形態とは異なっています。また、社員同様にチームを組みフラットな関係性で協働すべきであること、それにより社内にノウハウを蓄積していけるオープンな人材戦略であることなども鑑みると、対等とはいえ法人との取引(外注)とは異なるメリットも踏まえてよいでしょう。【特徴3】外部人材には非正規雇用等とは異なる業務が適切これまで触れてきたように、自律・独立性とスキルを持ち併せ、チームとして関係性をつくりながら協働する外部人材は、単なる人的リソースとは言えません。そのため、契約上定めた報酬条件があれど、決められた時間・場所で決められた単純業務への労働力を提供するパートタイマーやアルバイトとは異なります。また、彼らのスキルを最大限に活かすとすれば、既に社内で確立・体系化された業務のみを作業的に依頼するのに適しているとも言えません。そうした意味ではいわゆる派遣・契約社員等とも異なるということもおさえておきましょう。今回ご紹介したような、外部人材(プロ人材)そのものの定義や活用の基本的な概要をより詳しく知りたい方は、無料配布中のプロ人材活用ガイド&事例集で事例と併せてチェックしてみてください。また、外部人材の力をどのような業務に活かすべきか、まずは現状の業務整理から着手したいという方はこちらの事業推進・改善ワークブックも参考にしてください。いかがでしたか?今回はフリーランス保護新法のトピックについて取り上げつつ、そもそも外部人材活用の重要なメリットは何なのか、また外部人材とはどういう存在なのかについて概要的に整理をしてみました。みなさんの中で、フリーランスないし外部人材への思いこみや認識のズレがあったという方もいらっしゃるかもしれません。本記事を参考にしながら、改めて自身の組織を見直し、外部人材活用の価値を様々な角度から検討してみてください。