今回は「変化に強いチーム作り」について取り上げます。近年、AIをはじめとする技術の進展、少子高齢化の加速、グローバリゼーションの拡大などにより、社会・経済環境が目まぐるしく変化しています。また、テレワークの普及や副業・兼業などの働き方の多様化により、企業や組織のあり方も変わり、チーム内でのコミュニケーションに課題を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そのような状況下、最近では心理学・ビジネス・組織論など幅広い領域において「レジリエンス」という言葉を見かけるようになりました。本記事では、逆境を乗り越えるための力「レジリエンス」の重要性のほか、強い組織の作り方についてご紹介します。業務環境の変化によって注目されるようになった「レジリエンス」とは?そもそも「レジリエンスresilience」には、「復元力・回復力・弾力」という意味があります。心理学用語では「精神的な回復力・抵抗力」という意味で使われており、ビジネス領域にも広がってきました。個人が困難やストレスフルな状態に適応する、あるいはその状態から回復する過程やその能力を示すほか、組織においては複雑かつ変化する環境下での適応力を表す言葉として知られています。この言葉が注目されるようになったのは、自然災害やリーマンショック、新型コロナウイルス感染拡大といった、予測できない出来事が次々と起こり、企業としても対応を迫られていることが背景にあります。特にコロナ禍に入ったことでテレワーク中心の職場環境となり、組織のあり方が変化している企業が多くあります。それに伴い業務の進め方やコミュニケーションも一変したことで、従来のようなチームワークを発揮できず、戸惑っている方も少なくないでしょう。外部環境が変化する中で競争力を維持していくためには、逆境や困難にぶつかってしまったとしても柔軟に対応して乗り越えられる力が重要です。つまり、レジリエンスの高い組織体制を構築することが、各企業やチームでの課題になっているのです。レジリエンスの高い組織の特徴は?「自律型組織」と「管理型組織」の違いレジリエンスの高い組織とそうではない組織の違いを比べると、 “自律型組織かどうか” がカギを握ります。自律型組織とは、従来の中央集権・ヒエラルキー構造の管理型組織に対して、権限や意思決定が分散しメンバーが自主的に動く組織を指します。このような自律型組織では、下記の3つが特徴として挙げられます。【特徴1】メンバーの主体性階層や管理業務による無駄が少なく、各メンバーに権限があり意思決定を行えるため、チームの目標達成に向けて自発的に動くことができる傾向にあります。目標設定や各自の役割・業務などの重要な部分についてはコミュニケーションを取りながら決定されるため、当事者意識も強くなるでしょう。特にテレワーク中心の働き方であったとしても、各自がセルフマネジメントを行なうことにより業務推進が可能で、生産性の向上につながります。【特徴2】スピード感の早さ各メンバーに適切に権限移譲されていると、業務を進める上で都度リーダーの許可を得る必要がありません。そのため、業務対応の柔軟性が増したり、必要であれば他のメンバーを巻き込みながら課題解決に向けて動くことが可能になります。特に外部環境の変化が激しい状況下では、予期せぬ事態に対しても柔軟かつスピーディーに対応しやすいことで、根本的な競争力強化にも取り組みすくなるはずです。【特徴3】協働する文化作り目標達成のためには、他のメンバーとのコミュニケーションやチームワークが欠かせません。各自の業務が細分化していく中では、課題を発見し、解決に向けてお互いの強みを活かしながら協働することが重要です。そのため、円滑なコミュニケーションが必要とされるため、特にマネジメント層のフォローや環境作りがポイントになってくるでしょう。レジリエンスの高いチーム作りのために押さえておくべきことここからは、逆境や困難を乗り越えられるチーム作りをしていく際に、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。【ポイント1】レジリエンスの高い人材に参画してもらう変化に強いチーム作りをするためには、個々のレジリエンスを高めることが重要です。つまり、既にレジリエンスの高い人材をチームに迎え入れることで他のメンバーの力も引き上げるという方法が考えられます。具体的には、「自己効力感(セルフエフィカルシー)が高い」「自制心が高い」「貢献意欲が高い」人材です。そのような特徴を持つ人材を見極める上では、面接などで過去の経験や実績について確認すると良いでしょう。レジリエンスが高い人材は、失敗や困難に直面した場合でも、粘り強く業務に向き合い、成功に導いた経験があります。そのような成功体験があるからこそ、自分の行動によって結果を出せるという自信を持っていたり、新しいことにも積極的にチャレンジしたりすることができるのです。また、前向きな発言も多く、周りを巻き込むコミュニケーション能力も高い傾向があります。面接の際には、きちんとした意思疎通が可能かどうかも人材を見定める判断材料となるでしょう。【ポイント2】マインドセットを変える従来の管理型の組織形態の場合、意思決定を行なうことに躊躇するメンバー、あるいは失敗を恐れてしまうメンバーも少なからずいるでしょう。また、マネジメント層も細かい指示を出してしまうことに慣れている方もいらっしゃると思います。しかし、マインドセットを変えるためには、各自が主体的に取り組めるような環境整備を行なうことがポイントです。「失敗が許容される」「相談がしやすい」「お互いを尊重し合っている」というような「心理的安全性」が高いチーム作りを目指すと良いでしょう。そのためには、1on1ミーティングなどでリーダーとメンバーが対話する時間を設け、個々が抱える悩みや将来思い描くキャリアなどについて話し合い、相互理解を深めることが重要です。一人ひとりが実現したいことや目標を考えることで、自主的にアクションを起こすことにつながり、パフォーマンスを引き出せると考えられます。【ポイント3】チームの方向性と個人目標を明確にするレジリエンスの高いチームでは、各メンバーが目標達成に向けて主体的に動きます。そのためにはまず、チームの目指すべき姿や方向性を明確にすることが大切です。それが曖昧であれば、各自の行動もバラバラになってしまうからです。チームの方向性を決める際には、企業が定義しているパーパス(存在意義)やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を押さえておくことがポイント。これらを理解することで、企業の方向性や価値観に沿って業務を進めることができます。また、チーム全体の目標が定まったら、それを達成するために一人ひとりの目標にも落とし込む必要があります。きちんと目標を設定することで、個々の力を引き出しやすくしたり、適切な評価を行うことが可能です。目標設定の際には、指標やその定量、期間など、数値として可視化できるようにするのがコツ。効果的な目標設定を行うための代表的なフレームワーク「SMARTの法則」を参考にすると良いでしょう。こちらは下記の記事でも解説しています。外部人材との取引でも「目標設定」が重要!成果につなげるための「KGI/KPI」設定方法 − スキイキマガジンこのように、レジリエンスの高いチームを作るためのポイントを押さえながら、環境の変化に柔軟に対応できる人材へ育成したり、マネジメントを行なったりしてみてくださいね。チーム作りに関しては、無料配布中のプロ人材活用ガイド・事例集でも事例と併せてぜひチェックしてみてください。いかがでしたか?先行きが見えない状況でも外部環境の変化に対応していくことができる組織作りには、逆境に強いチーム作りが求められます。レジリエンスの高いチームの特徴や、一人ひとりのパフォーマンスを高めるためのマネジメントの工夫を行い、チームビルディングに活用してみてくださいね。