今回は「業務委託の人材の評価方法」について取り上げます。テレワークや副業・兼業など、働き方が多様化する中で、正社員中心のメンバーで構成された企業においても、雇用形態の考え方が変化しつつあります。業務委託を活用する機会も増えており、外部人材(フリーランスや副業人材)を含んだ多様な人材が集まるチームであっても、1人ひとりを適切に評価して、成長させていく必要があります。本記事では、業務委託を行う際に重要になってくる人材評価のコツをご紹介します。2人に1人は経験あり!?業務委託の活用実態業務委託が増えてきた背景には、従来一般的だった終身雇用や年功序列型の評価体系から、職務内容を明確にして成果に応じた評価をする体制への変化があります。これは、社内人材のモチベーションを上げるほか、社外から優秀な人材を集めるために、いわゆる「ジョブ型雇用」のようなスキル重視の考え方に移行が進みつつあるということです。ジョブ型雇用のような人材戦略においては、評価の視点はその専門的な職能や経験になります。また、正社員といった雇用形態にも囚われず、高度なスキル・ノウハウを業務に反映するために、今では技術職だけではなくビジネス系職種なども含め多種多様な人材をスキル重視で活用することになります。ある調査では「2人に1人は自社で業務委託の活用経験がある」という回答結果もある今、従来より活用が盛んだったエンジニア系などの職種に限らず、情報システムや採用、研修といった分野でも活用が進んでおり、人材不足を補うだけではなく専門的なスキルや経験を求めているというニーズが顕著になっています。社員を育成したり、高度な知見を持つ人材を採用したりするには、時間や費用が必要です。スピーディーに成果に結びつけるために、豊富なスキル・ノウハウを持った即戦力となる人材に業務を委託する機会が増えていることも頷けるでしょう。業務委託の人材を評価する際の基本ポイント正社員とは異なり、業務委託の人材は基本的に契約期間が定められているため、契約を継続するか否かの判断をする上でも、人材評価が非常に重要となります。上手く評価ができなければ、各分野のプロである彼らの成果をきちんと判断できません。また、成果が曖昧なまま契約を続けてしまっている場合、時間・コスト面での無駄が発生してしまいます。そこで、業務委託で活用する人材への評価方法のポイントを2点ご紹介します。【ポイント1】どのように評価するか場合によっては業務委託の人材に対する評価は行なっていないという企業もあるかもしれませんが、前提となる「いつまでに、何を、どうする」という「求める成果」を数値で可視化できるようにして、ミッションとゴールを擦り合わせておくのは重要です。目標を明確にする上では、目標達成の実現可能性を高める優れた考え方とされている “「SMART」の法則” を活用すると良いでしょう。これは「Specific」「Measurable」「Achievable」「Relevant」「Time-bound」の頭文字を取った言葉です。この法則に沿って目標を設定すれば、ゴールと現在地のギャップも可視化でき、適正な評価がしやすくなるでしょう。一方で、新規事業など、契約期間内に成果を求めることが難しい場合もあリます。そういった場合には、成果だけではなく、プロセスで評価することも必要になってきます。業務の特性を事前に確認した上で、評価方法を検討しておくと、後々の評価段階への移行がスムーズになると考えられます。そして、目標達成に向けた行動や働きができているかという観点で人材を評価していくと良いでしょう。【ポイント2】誰が評価するか評価を行う際には、「評価をするのが誰か」という視点も重要です。評価担当者は、対象業務のプロセスや、プロジェクトの目的や状況、貢献度なども踏まえ、多面的に評価をすることが欠かせません。単に部門の責任者やリーダー層が一方的に判断するだけでは、その評価担当者の主観が入りやすい場合もあります。一緒に現場で業務している社員メンバーなども巻き込むことができると、「組織・部門の目標に応じた評価」と「稼働パフォーマンスやチーム内での貢献に応じた評価」を横断し、客観的に適切な評価をしやすくなるでしょう。「360°評価」という制度として、業務委託の人材に限らず社員全員の評価方法として導入するケースもあり、評価される側としても納得感が得られるというメリットもあると考えられます。【ポイント3】いつ評価するか業務委託の人材の評価は、「月々の報酬支払いのタイミング」と「契約継続•終了を検討するタイミング」で行うことが基本です。毎月の評価では、目標に対する達成率や進捗を確認しながら、業務にしっかり取り組めているかどうかを見るようにしましょう。一方、契約継続・終了を検討する際には、事業やプロジェクト全体を振り返り、目標を達成できたかどうか、どのように貢献できたかどうかなどを見て評価を行うと良いでしょう。契約更新を前向きに検討している際は、遅くとも契約終了の1ヶ月前には、人材側に更新の可否について相談するのがおすすめです。定期的に面談を行い、こまめに期待感や評価を伝えることで、人材側としてもフィードバックを業務に活かしたり、改善したりでき、モチベーションの向上にもつなげられると考えられます。業務委託によって働く副業・兼業人材やフリーランスのことを「外部人材」とも呼びますが、その活用の基本について改めて振り返る際は、無料で配布しているプロ人材活用ガイド&事例集でも事例とともに解説しています。また、外部人材を活用するにあたって、募集時や稼働時に見定めるべき自社課題を整理し、相互にズレのない業務要件を作っておくための事業推進・改善ワークブックも配布していますので、参考にしてみてくださいね。業務委託の人材が活躍でき、適切な評価もできるような組織作りのコツ外部人材のような業務委託メンバーと働く際は、ともにチーム作りをするという意識を持つことが重要です。事業やプロジェクトの目標を同じように捉え、それに向かって業務にあたるのは、社員であっても業務委託であっても同じだからです。様々な形態の人材と協働しながら成果を出せるチーム作りのためには、押さえておきたいポイントがいくつかありますのでご紹介します。【工夫1】前提となる会社のパーパスやMVVを明示する事業やプロジェクトの目標は、会社のパーパス(存在意義)やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)をもとに設定されています。そのため、目指している方向性を認識し、そこから逆算して個人の目標に落とし込んでいくことが重要です。例えば、上記のような目標管理手法の「OKR」を活用して具体的な目標を定めていくのも有効です。会社全体の「目標Objectives」とそれを達成するための「成果指標Key Results」を明確にした上で、チームやプロジェクトでも同様にそれらを決め、そして各メンバーの目標と評価指標を順に紐づけながら設定していきます。こうした工夫により、外部人材が担当する業務・役割が果たすべきミッションが明確になり、より能力を発揮しやすい環境が整うと考えられます。【工夫2】社員と分け隔てない業務環境を用意する業務環境の面でも意識すべきことがあります。例えば、外部人材に依頼する業務や求めるパフォーマンスに対して、正社員しかアクセスできない情報が多過ぎたり、必要なのに権限がないものがあったりすると、情報格差が生まれてしまい十分にスキルを発揮してもらえない関係性になりかねません。チーム内での情報共有も円滑に進まなくなってしまい、コミュニケーションもとりずらくなります。「業務に必要となる共有情報やミーティングとはどのようなものか」また「その方法・頻度をどのようにすべきか」はもちろん、用いるべきコミュニケーションツールなどもきちんと整備し、全員で雇用・労働形態を意識せずに仕事ができるようなフラットな関係性を作ることが求められてきます。チーム内で必要な情報については平等にアクセス権限を付与したり、定例ミーティングなどの場を用意するのを怠らず、必要な物事は漏れなく共有し合える状態にすると良いでしょう。また、外部人材の稼働条件は場合によっては多種多様ですが、基本的に常に終日従事してもらう正社員とはワークスタイルが異なります。リモートがメインになることも多いため、可能であればSlackやChatworkなどのチャットツールを活用し、正社員か外部人材かの垣根に関係なく、業務連絡も、業務外の雑談などもスムーズにできる環境を作ることで、よりスムーズに意思疎通が図れるようになるはずです。【工夫3】テキストコミュニケーションの方針を明確にする上述のようなツールも、ただ活用するだけではなく、その活用の方針・ガイドラインなどを整理しておけると、外部人材が最大限に働きやすい状態に近付けることができます。どんなツールを用いていても、例えば「この会社ではこういうことをどう話しているのだろう?」「このトピックはどこで誰に伝えているのだろう?」といった不安がつきまとえば、本分である担当業務の内容ではないところで余計な時間がかかり、コミュニケーションミスも生みかねません。プロジェクトごと、あるいはチームごとにコミュニケーション手段やルールが異なるケースも多いので、マニュアルとして明文化しておくのも良いでしょう。そうすれば、外部人材だけではなく、人事異動や中途入社などで新たな人材がチームに入った際にもスムーズにコミュニケーションをとれると考えられます。環境を整備するということは「人材のパフォーマンスを機会損失させず最大化するということ」と心得ておき、後になってから不平不満や認識のすれ違いが起きてしまうような要因を減らし、お互いに納得できる協働の関係性作り、また評価につなげられることを目指しましょう。いかがでしたか?人材形態の多様化が進む中、フリーランスや副業のような外部人材、業務委託メンバーも含めた組織作りが今後さらに重要になってきます。正社員・外部人材といった雇用形態にとらわれず、企業のビジョンを実現する一員として外部人材も巻き込んだチーム作りをしていくことが、成果をつくる上でもポイントになります。ぜひ人材活用を効果的に行なうためにも、人材評価について考えてみてはいかがでしょうか。