今回は、業務委託契約におけるトラブルについて取り上げます。新規事業やプロジェクト強化に向け、新たに人員確保や発注先の検討をする際、雇用契約や業務委託契約を結ぶでしょう。プロジェクトを推進しながら煩雑な契約関連の対応もするとなると、思わぬところでトラブルが発生するケースも少なくありません。そこで、本記事では、副業やフリーランスなどプロ人材との業務委託契約時によくあるトラブルとその原因、その解決法について探っていきます!経営者層・マネジメント層の方を中心に、人材活用する際の参考にしていただけたらと思います。口約束が原因?業務委託契約で起きやすいトラブルとはプロ人材と業務委託契約を締結し、いざ業務を委託しても、何かしらのトラブルが発生してしまうと、トラブル対応のための時間のロスや、最悪の場合は法的処置に発展するなど、かえって痛手の方が大きくなってしまうケースも無いわけではありません。フリーランスの約半数がトラブルを経験日本労働組合総連合会が行なった『フリーランスの契約に関する調査2023』によれば、フリーランスの約半数(46.1%)が「仕事上でトラブルを経験したことがある」と回答しています。具体的には、「不当に低い報酬額の決定」「一方的な仕事の取消し」「報酬支払いの遅延」が上位3位を占めています。なぜこのようなトラブルが起きてしまうのでしょうか?よくある「日頃の信頼関係で」が後のトラブルに?同調査で「フリーランスとしての業務を受注する際の業務内容や条件、権利・義務等の発注者との確認や合意方法についてどの程度行っているか」という質問に対し、「口約束で確認・合意を行っている」と回答した割合が56%にのぼることからも、契約内容がきちんと明文化されていないことが原因だと推測できます。契約書を締結しない背景には、「日頃の信頼関係があるため」「書面で契約しなくても、権利や報酬が保障され、円滑な業務遂行に支障がないため」「発注者から提示されなかったため」「契約書を交わす慣例がなく、受発注側どちらにもその発想がないため」等の要因があるという調査結果が明らかになっていますが、そのような曖昧な状態が後々のトラブルに繋がってしまうことがうかがえます。トラブル防止には下請法やガイドラインの理解が必要!フリーランスとして活動している方は、「下請法」について耳にしたことがあるのではないでしょうか。フリーランスも対象となる「下請法」プロ人材採用・活用にあたって遵守すべきルールは主に「民法」「独占禁止法」「下請法」「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」の4つとされていますが、特に下請法については正しい理解が必要です。下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)とは、親事業者(発注者)よりも取引上の立場の弱い下請事業者(受注者)の利益を保護するために作られた法律であり、報酬の支払遅延や未払い、買い叩きなど、年々増加する企業と外部人材間のトラブルも対象となり得るものです。下請法では資本金要件という適用範囲があり、対象となる取引内容によって異なりますが、一般的な情報成果物・役務を委託する場合においては「発注側が資本金5,000万円以上/受注側が資本金5,000万円以下」または「発注側が資本金1,000万円〜5,000万円/下請側が資本金1,000万円以下」という条件下でも適用され、またこの受注側である下請事業者には個人も含まれます。この場合、発注側である親事業者には下記のような遵守すべき義務が課せられます。【例1】発注書面の交付義務:親事業者が下請事業者へ業務を発注する場合、必要事項が記載された発注書を直ちに発行することが義務づけられる。【例2】遅延利息の支払義務:定められた支払期日までに所定の支払いが行われなかった場合、親事業者は下請事業者に対して遅延利息を支払う義務が課せられる。これらの義務に対して違法行為があった場合、フリーランスなどの下請事業者は、中小企業庁が設置している相談窓口等へ相談することで、相談員からのアドバイスや、場合によっては弁護士への相談も可能となります。このようにプロ人材も保護される下請法ですが、フリーランスを対象に調査された『フリーランス白書2020』によれば、そもそも「発注企業の資本金が1,000万円超の場合は、フリーランスの方も下請法の対象になる」ということを知らないと回答した方は過半数以上(57.8%)にものぼっていました。そもそも、このような情報はなにを参照すればよいのか分からない、という方も多いはずです。適正な取引に向けOK&NGをまとめた「ガイドライン」の存在さらに、政府が作成している『下請適正取引等の推進のためのガイドライン』というものもあります。これは親事業者と下請事業者との間で適正な取引が行われるよう国が策定したガイドラインで、参考となる望ましい取引事例や、下請代金法等で問題となり得る取引事例などが分かりやすく具体的に可視化されたものです。発注企業も副業・フリーランス側もそれぞれこのようなガイドラインを有効活用し、最低限でも基礎知識をおさえておくことで、調査に上がってくるようなトラブルの防止にはつなげられるかもしれません。しかし、先の同調査結果では、このガイドラインの存在・内容についても知らないと回答した方が64.5%にものぼります。また、ガイドラインの存在を知っている人の中でも、「ガイドラインに沿った発注がなされたり、ガイドラインに基づく発注改善を要求できたりしている」と回答した方はわずか20~30%ほど。いかにプロ人材(副業やフリーランス)にとって下請法が理解されておらず、ガイドラインが認知・活用されていないかが浮き彫りになっています。一方、ある「下請法に関する意識・実態調査」によれば、下請法についての部長職以上の認知度は78.5%という結果となっており、契約締結時は発注企業側が主導的に下請法やガイドラインの把握について説明し、契約内容を確認・理解してもらうことが必要と言えるでしょう。外部人材(プロ人材)活用における基本をはじめ、契約や業務範囲の考え方に関しては私たちスキイキでも下記のプロ人材活用ガイド&事例集にまとめているのでぜひチェックしてみてください。さらに、下請法やガイドラインが策定されている一方で、資本金1,000万以下の親事業者は下請法の抜け穴となっていたり、ガイドラインは法的な拘束力が無かったりすることから、「フリーランス保護新法」制定に向けた動きもあります。最新情報にアンテナを張りながら、きちんと対応していくことが求められるでしょう。フリーランス保護新法から見えてくる、全企業に欠かせない外部人材活用の基本 - スキイキマガジントラブル回避だけじゃない!企業&外部人材の関係構築にも有効な解決法このような現状で、業務委託契約時のトラブルはどのように回避できるでしょうか?【ポイント1】書面での契約締結まずは最低限、企業にとってもフリーランスにとっても、きちんと書面で業務委託契約を締結することが基本となるでしょう。フリーランス側が下請法などにまつわるリテラシーを高め、ガイドラインを活用するのはもちろんのこと、企業としてもそれらに準じて契約締結をするだけでなく、秘密保持に関する項目や競業避止義務に関する項目がある契約においては、事前説明の徹底と、契約書を用いて詳細まで明確にし、フリーランス側との認識のズレがないようにしておくことが大切です。ただし、書面での契約締結はその書面作成に手間がかかることはもちろん、そもそもの条件交渉や取引先手続きなど、煩雑な作業が重なりがちです。当然そうなるとヒューマンエラーやリスクも増えていってしまいます。そこで、「マッチングプラットフォーム」が悩みを解決する一助になるかもしれません。【ポイント2】マッチングプラットフォームの活用各社サービスによって機能は様々ですが、例えば私たち『スキイキ』では、条件オファーを経て、電子契約や検収(業務報告管理)などを含む一連の工数をプラットフォーム内で行うことができます。また、万が一トラブルになりそうになった場合でも、契約条件や双方のやりとりもログを確認できるため、後々に確認することも容易にできるので安心でしょう。フリーランスや副業などのプロ人材と協働していく上では、信頼関係を築き、人材の持つスキルや知識を発揮できる体制づくりが大事になってきます。事務的な手続きを現場の理解だけでやってしまうと業務遂行に集中できなかったり、スキルを最大限に発揮してもらうための関係構築が難しくなってしまいかねません。そのため、マッチングプラットフォームを活用して、サポートやアドバイスをもらいながら プロ人材採用・活用を検討すると、よりリスクを抑えながら、新規事業やプロジェクトの拡大を図れるのではないでしょうか。過去記事(↓)でもこのメリットを紹介していますので、ぜひご覧ください!マッチングサービスをうまく活用しよう!信頼できるフリーランスとの出会い方 - スキイキマガジンいかがでしたか?今回は、フリーランスと企業との業務委託契約におけるトラブルとその背景、解決策についてご紹介しました。下請法やガイドラインなどを最低限は押さえた上で、事前にプロ人材と企業側とで認識を合わせて、明文化された契約締結をすることがトラブル回避のために大切です。今後様々な形で業務委託をしようと検討している企業にとっては、マッチングプラットフォームなどの仲介サービスを活用してすることで、双方にとってよりスムーズな業務遂行につながるでしょう。人材の採用・活用をすることがゴールではなく、その先の組織作りや目標達成までのプロセスを視野に入れながら人材活用について検討してみてくださいね。